第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。  第11章 人情。  第12章 暮らし。

第13章 思い。  第14章 一緒に。


その子猫には、頬と後ろ足に目立った皮膚疾患があった。

併設の病院で今後の治療計画と細かい説明を受け
培養検査の結果が出るまで塗り薬をつけて過ごすことになった。

いちあし
皮膚疾患部分の毛を剃った後ろ足

家に帰り、元気よくボールで遊ぶ子猫の姿を見て ” 一球 ” と名付けた。

数日後、検査の結果白癬だということがわかった。
体の毛をかき分けて注意深く見なければわからないほどの小さな疾患もいくつかあること、
そして真菌性外耳炎であることもわかった。

ichi
右頬に皮膚疾患がみえる ” 一球 ”

顔以外の毛を全て剃り、週に1度の薬浴にも欠かさず通い、
カラーでの生活を続けた ” 一球 ” の皮膚疾患も少しづつ改善が見られてきた頃。




仕事中の娘からから電話があった。




「お店の裏に瀕死の子猫がいるの!どうしたらいい?」




その日、瀕死の猫を見つけた人に ” すでに息がない ” と聞いていたそうだが
実はまだ息があるらしいと知り、慌てて私に電話をして来たのだ。
そんな娘の説明が終わらないうちに



「今から行くから」



と答え、仕事先へ向かうと娘が待っていて
そこには小さな茶トラの子猫が横たわっていた。




「病院へ行こうね」




私は子猫を布の袋につつんで抱え、かかりつけの病院へと向かった。
しかしあいにく病院のシャッターは下りていて、他の病院を探すことになった。
数件電話をして、時間外だがみてくれるという病院がみつかった。
電話で ” もうだめかもしれない ” ことは告げていた。


病院に着くと、獣医師は袋の中を覗き込んでこう言った。



「これ、ホントに生きてたの?」



そして続けてこう言った。



「その辺に埋めるしかないね」



獣医師の言葉に私は耳を疑った。



「すみませんでした」


とひとこと告げ、私は病院を後にした。




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第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。  第11章 人情。  第12章 暮らし。

第13章 思い。


家族に手を引かれて再びペットショップに戻ると、
ミックスの兄妹たちが並んでいるその端の方に人だかりができていた。

そこにはぴょんぴょんと元気に飛び跳ねる、ひときわ目立つ子猫がいた。
休憩から戻ってきたその子は、他の子達より少しだけ大きかった。



「この子は皮膚疾患で療養中なんです」




真菌感染症のその子猫は、完治するまでショップで治療を続けるという事だった。
皮膚疾患が完治するまでにこの子が大きくなっていく様子は、すぐに想像できた。

私はその話を聞きながら、過去に ” 大きくなって売れなくなった” という理由で
ショップから引き取ることになった猫の ” おまけ ” のことを思い出していた。

おまけ
熱帯魚店から引き取ったアメリカンショートヘアーの ” おまけ ”


色々なことが頭の中に蘇ってきていたその時、家族がこう言った。




「この子と一緒に帰ろう」




そのショップで週に1度の薬浴を受けること、
完治まで責任を持って併設の病院へ通院させることで了承してもらい
その日のうちに連れて帰ることになった。




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第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。  第11章 人情。  第12章 暮らし。


” わらじ ” との別れのあと、私は少し離れた土地へと移り住み、新たな生活を始めた。
休みの日には近くのペットショップへ行くのが楽しみだった。


そんなある日。
いつものペットショップに「ミックス」と書かれた2匹の兄妹ねこがいた。



「抱っこしてみませんか」



アビシニアンのミックスだという2匹の子猫は、手のひらに乗ってしまうほど小さかった。

ペットショップで動物を抱かせてもらったのはこの時が初めてだった。
この子たちも離れ離れになるんだろうと思うと
可愛いというよりも可哀想という気持ちの方が大きかった。



ペットショップを後にして、フードコートでお茶を飲んでいる時、
家族がこう言った。




「連れて帰ろうか」




” わらじ ” と別れた時、自分はもう猫と暮らすことはないと思っていた。
でもそれは、猫と暮らすことを考えていなかったのではなく
自分の心と一緒に猫と暮らしたいという思いに蓋をしていたのだ。
その思いに気づいていた家族がそう言ってくれた。




「もう一度会いに行ってみよう」




” わらじ ” と別れて数年経ってからの事だった。
言葉が出ない私は手を引かれたままフードコートをあとにした。



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第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。  第11章 人情。



引っ越した家のすぐ裏手には、子供が水遊びできるほどの小さな川が流れていて、
そこはのら猫たちの遊び場にもなっていた。

その先にのら猫たちの集会場となっている小さな神社があって、
お年寄りと日向ぼっこするのら猫の姿をよく見かけた。


川沿いにある小さな総合病院の裏庭では、のら猫が患者さんの話し相手になっていた。


金魚屋で出逢った、焼き菓子色をした子猫の ” クッキー ” と ” わらじ ” には
のらねこの友達もたくさんできた。



ある時、お隣が犬の散歩中に瀕死ののら猫を見つけ病院へ連れて行った。
数週間後、片方の視力を失って戻って来たが、
助けてもらったと思っているのか、元いた場所へ戻る事はなかった。
鼻にしずく型の模様があったその猫に ” しずく ” という名前を付け、我が家へ迎えた。


その後、私はその家で猫の出産に2度立ち会う事になり、
仮死状態で生まれてきた子猫の蘇生も経験した。



初めて猫が出産を迎えた頃。
ご近所から、育児放棄されてまだ目も開かない子猫を託された。
我が家で出産した猫は自分の産んだ子供と一緒に、その子猫を我が子として育てあげた。

ちゃう
白黒の子猫と共に育った、さび猫の ” ちゃう ”


子猫が生まれてくる瞬間も、甲斐甲斐しく子育てする姿も
猫に教わる事はとても多かった。


ちびた


のら猫にも、人と暮らす猫にも、猫には猫の暮らしがちゃんとそこにはあった。
猫の出産と育児を終始見続けた私は、自分が家族との別れを経験したこともあり
できる限り家族一緒に過ごして欲しいと願い、子猫を欲しいという申し出をすべて断った。


出逢いの数だけ、たくさんの別れもあった。
静かに眠る ” クッキー ” のそばを離れず ” わらじ ” が涙を流していた。
人と同じように、猫にも悲しみは存在すると思った。


数年後。
” わらじ ” との別れがあり、私はもう猫と暮らすことはないと思っていた。



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第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。


私は ” わらじ ” と ” 娘 ” を連れて、
今までより少しだけ雑踏の聞こえる街に移り住んだ。


大きな一軒家を二つに分けた借家だった。
不動産屋の張り紙でみつけた時、そこは動物と暮らすことが禁止されていた。


それでもその家を選んだのは、お隣がたくさんの犬と暮らしていたこと、
さらに隣の敷地には大家さんの家があって、
お隣がたくさんの犬と暮らしていることを承知だったこと、
なによりお隣がとてもいい方だったことだった。


引っ越す前に何度か草取りに出かけ、その都度お隣に色々教えてもらった。

この辺りにはのら猫がたくさんいることや、ご近所さんはみんなのら猫に寛容なこと。
少しだけ都会だと思っていたその街が、実は人情味あふれる下町だったことも知った。
そして新しい暮らしが始まった。


その頃勤めていた職場のすぐ近くに金魚屋があった。
私はそこのおじちゃんと話をするのが好きで、帰りによく遊びに行っていた。
ある日、金魚屋の店先に2匹の子猫がいた。
私はすぐにおじちゃんに話を聞いた。



「誰かが息子のところに置いてったんだよ」



金魚屋の向かいには、おじちゃんの息子さんが開業している動物病院があった。
その日の朝、病院の前に子猫の入ったダンボールが置かれていたそうだ。



「優しい家族が見つかるといいんだがね…」



「おじちゃん、待ってて」



私はそう言って、職場へ戻った。


その頃私は運送会社で働いていて、
仕事仲間はみんな人情味にあふれたおじさんばかりだった。



「金魚屋に子猫が…」



1匹はすぐに家族が決まった。
そしてまた ” わらじ ” に家族が増えた。


く~



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