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第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。  第11章 人情。  第12章 暮らし。

第15章 無情。  第16章 兄妹。


翌日、かかりつけの病院へ連れて行き、経緯を話した。
現在の状況だけでも分かれば、と白血病とエイズの検査をしてくれた。



「どっちも白だよ」



エイズ検査は6ヶ月程度にならないと正確な結果が得られないそうだが、
子猫の口の中はとてもきれいで、その時点では大丈夫だろうとの話だった。
そして白血病にもかかっていなかった。



「がんばったご褒美」



先生は子猫の頭をなでながら、おやつをあたえた。



「まずはたくさん食べて、体重を増やさないとね」



そう言って、袋いっぱいにフードを持たせてくれた。



ワクチン接種までの数日間 ” 一球 ” と ” 子猫 ” が距離を縮めていく姿を見て
その子猫を家族として迎えることを決めた。


兄妹だったであろう茶トラの子猫の分まで幸せになって欲しいという思いと
頭にちょっぴりうずら豆のような色がある子猫に ” 茶まめ ” という名前を付けた。



こうして ” セラピーキャット ” としてやってきた ” 一球 ” と ” 茶まめ ” の間に
かわいい5匹の子猫がうまれ、その3年後、ケガをした ” 走太 ” に出逢い
私はふたたび猫にかこまれた穏やかな暮らしをおくることになる。




                END

ちゃちび

ちゃ~ぴ~2

いちちび

かぞく2

かぞく1

8

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真菌感染症で療養中のまま家族として迎えた ” 一球 ” は肝臓の数値もとても高かった。
血液検査や肝生検などでは原因が特定できなかったが、
開腹など麻酔を伴う手術は危険だということで見送られていたため、
” 茶まめ ” を迎えた時点で去勢手術は受けていなかった。
その後服薬などの治療を続け、3歳になる少し前に去勢手術を受けた。

去勢・避妊については賛否あるが、我が家では病気のリスクを減らすために受けることにした。


■ アニマルセラピー ■

動物と触れ合わせることでその人に内在するストレスを軽減させたり、
あるいは当人に自信を持たせたりといったことを通じて
精神的な健康を回復させることができると考えられている。



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あとがき

拙い文章にもかかわらず、第1章から目を通して下さったみなさま、
また、コメントくださったみなさま、ありがとうございました。

実際はここには書ききれない出逢いや別れもたくさんありました。
命に対する考えは百人百様で、数学のように正解が一つではないこと、
百の考えがあるということは、それ以上の可能性があるということ、
自分が正しいと思っていることが、必ずしも相手にとって良いことだとは限らないこと、
そしてそれは人間でも動物でも同じことだと私は思っています。


今はインターネットやSNSでさまざまな情報入手を簡単にできる世の中になりました。
でも自分が目で見たこと以外に真実を知るということは、本当に難しいことだと思います。
だからこそ、批判をする前に掘り下げて考えてみてください。

以前、道路の真ん中で丸くなっている猫をみつけ
危なくないようにと草むらに連れて行ったことがあります。
その場面を見た人が ” 猫を捨てた ” と思うかもしれません。

川で子猫を助けたいと思って石を投げていた場面を見た人が
もしかしたら子猫を虐待していると思うかもしれません。



こんな言葉が書かれた本があります。




何か良いことをしても
相手からみたら
ありがた迷惑かもしれない

だから何かする時には
これは(自分がしたいからしてるんだ)って
ちゃんと自分で
腑に落ちてないといけない




これは猫とはまったく関係のない本の言葉ですが
どんなことに対しても同じではないかと思っています。


そして現在、医学の進歩によりさまざまな変化が遂げられています。
しかし動物実験に反対する声はとても多いと思います。

私自身、それに対して諸手を挙げて賛成というわけではありません。
でもロッキーが受けた心臓の手術も、少なからず命の糧になったと思っています。
医学の進歩は人間にとっても動物にとってもたくさんの命のおかげだということを
忘れてはいけないと思っています。

そして、そのためだけに生まれてくる命があることも知っておいてください。

第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

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第15章 無情。

私は長い眠りについた子猫を抱え、動物病院をあとにした。

ここへ越してきて、はじめてこの場面に立ち会った私は
県の動物愛護センターに問い合わせ、子猫を引き取りに来てもらえる所を教えてもらった。

せめてもの供養になればと、小さな花柄の紙袋にきれいなペットシーツを敷き、
子猫と一緒にドライフードとおやつを入れた。



数時間後、市役所から1人の男性が子猫を引き取りにやってきた。



「この子です」



そう言って小さな袋を渡すと



「ご連絡、有難うございました。お預かりします」



そう言って頭を深く下げて帰っていった。
子猫を助けられなかった事と、獣医師の心無い言葉に打ちひしがれていた私は、
その男性の ” お預かりします ” という言葉に少し救われた気がした。




それから10日ほどたった頃。

夜遅くスーパーへ行くと、コンテナの下から猫の鳴き声が聞こえてきた。
暗くて姿は見えないが、大きな声で何度も何度も鳴いていた。



「おいで」



鳴き声のする方に声をかけてみると、警戒しながらも子猫が近づいてきた。
そこは、あの茶トラの子猫がいた場所だった。



子猫の大きさと毛色を見て、あの茶トラの子猫と兄妹だと思った。
少しの間、そこで子猫の家族がいないか様子をみていたが
茶トラの子猫が生きていけなかったことを考え、とにかく連れて帰る事にした。



家に戻り、子猫のお腹が満たされたところでお風呂に入れた。
きっとひとりぼっちで寂しかったのだろう。
家族の胸に抱かれ、子猫はすやすやと眠りについた。

ちゃ

第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。  第11章 人情。  第12章 暮らし。

第13章 思い。  第14章 一緒に。


その子猫には、頬と後ろ足に目立った皮膚疾患があった。

併設の病院で今後の治療計画と細かい説明を受け
培養検査の結果が出るまで塗り薬をつけて過ごすことになった。

いちあし
皮膚疾患部分の毛を剃った後ろ足

家に帰り、元気よくボールで遊ぶ子猫の姿を見て ” 一球 ” と名付けた。

数日後、検査の結果白癬だということがわかった。
体の毛をかき分けて注意深く見なければわからないほどの小さな疾患もいくつかあること、
そして真菌性外耳炎であることもわかった。

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右頬に皮膚疾患がみえる ” 一球 ”

顔以外の毛を全て剃り、週に1度の薬浴にも欠かさず通い、
カラーでの生活を続けた ” 一球 ” の皮膚疾患も少しづつ改善が見られてきた頃。




仕事中の娘からから電話があった。




「お店の裏に瀕死の子猫がいるの!どうしたらいい?」




その日、瀕死の猫を見つけた人に ” すでに息がない ” と聞いていたそうだが
実はまだ息があるらしいと知り、慌てて私に電話をして来たのだ。
そんな娘の説明が終わらないうちに



「今から行くから」



と答え、仕事先へ向かうと娘が待っていて
そこには小さな茶トラの子猫が横たわっていた。




「病院へ行こうね」




私は子猫を布の袋につつんで抱え、かかりつけの病院へと向かった。
しかしあいにく病院のシャッターは下りていて、他の病院を探すことになった。
数件電話をして、時間外だがみてくれるという病院がみつかった。
電話で ” もうだめかもしれない ” ことは告げていた。


病院に着くと、獣医師は袋の中を覗き込んでこう言った。



「これ、ホントに生きてたの?」



そして続けてこう言った。



「その辺に埋めるしかないね」



獣医師の言葉に私は耳を疑った。



「すみませんでした」


とひとこと告げ、私は病院を後にした。

第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

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第13章 思い。


家族に手を引かれて再びペットショップに戻ると、
ミックスの兄妹たちが並んでいるその端の方に人だかりができていた。

そこにはぴょんぴょんと元気に飛び跳ねる、ひときわ目立つ子猫がいた。
休憩から戻ってきたその子は、他の子達より少しだけ大きかった。



「この子は皮膚疾患で療養中なんです」




真菌感染症のその子猫は、完治するまでショップで治療を続けるという事だった。
皮膚疾患が完治するまでにこの子が大きくなっていく様子は、すぐに想像できた。

私はその話を聞きながら、過去に ” 大きくなって売れなくなった” という理由で
ショップから引き取ることになった猫の ” おまけ ” のことを思い出していた。

おまけ
熱帯魚店から引き取ったアメリカンショートヘアーの ” おまけ ”


色々なことが頭の中に蘇ってきていたその時、家族がこう言った。




「この子と一緒に帰ろう」




そのショップで週に1度の薬浴を受けること、
完治まで責任を持って併設の病院へ通院させることで了承してもらい
その日のうちに連れて帰ることになった。

第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

第7章 決断。  第8章 家族。  第9章 ケセラセラ。  第10章 別れ。  第11章 人情。  第12章 暮らし。


” わらじ ” との別れのあと、私は少し離れた土地へと移り住み、新たな生活を始めた。
休みの日には近くのペットショップへ行くのが楽しみだった。


そんなある日。
いつものペットショップに「ミックス」と書かれた2匹の兄妹ねこがいた。



「抱っこしてみませんか」



アビシニアンのミックスだという2匹の子猫は、手のひらに乗ってしまうほど小さかった。

ペットショップで動物を抱かせてもらったのはこの時が初めてだった。
この子たちも離れ離れになるんだろうと思うと
可愛いというよりも可哀想という気持ちの方が大きかった。



ペットショップを後にして、フードコートでお茶を飲んでいる時、
家族がこう言った。




「連れて帰ろうか」




” わらじ ” と別れた時、自分はもう猫と暮らすことはないと思っていた。
でもそれは、猫と暮らすことを考えていなかったのではなく
自分の心と一緒に猫と暮らしたいという思いに蓋をしていたのだ。
その思いに気づいていた家族がそう言ってくれた。




「もう一度会いに行ってみよう」




” わらじ ” と別れて数年経ってからの事だった。
言葉が出ない私は手を引かれたままフードコートをあとにした。

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