第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。

第7章 決断。

子猫の ” ちょんちゃん ” との暮らしは、それまでとはまるで違った。
初めて家の中で動物と暮らすこともひとつの理由だったが、
1番の理由は ” ちょんちゃん ” が、とにかく私に懐かなかったことだった。


私だけでなく、父にも兄にも心を開かなかった。
今思えば、それは生まれ持っての性格だったのかもしれない。
でもその時は、生まれて間もなく人の手によって母親と引き離されたことが、
” ちょんちゃん ” にとっては耐え難い事だったんだろう、そう思った。
それでもなぜか母にだけは甘えていた。


” ちょんちゃん ” は縁側で日向ぼっこをしながら ” ちび丸 ” と遊ぶ事が好きだった。
心を閉ざしていた” ちょんちゃん ” が、初めから犬の ” ちび丸 ” と打ち解けていたのは
我が家へやってきた経緯がよく似ていたからかもしれない。
そんな” ちょんちゃん ” は母の手で育てられることになり、
少しづつ父にも心を開いていった。


それから数年後。
母は ” ちょんちゃん ” を娘のように可愛がり、いつも楽しそうに過ごしていた。
私にも新しい家族ができ、実家を離れる事になった。



ある夜。
出先で雨に降られ、家族と駐車場に停めてある車へと走っていた。
雨音の中にかすかな猫の鳴き声が聞こえた気がした。


「にゃ~ん」


私は猫の鳴きまねをしながら車の下を探した。


「にゃ~ん、にゃ~ん、出ておいで」


数分後、1匹の真っ黒な小猫をみつけた。
ずぶ濡れの子猫がよろよろと近づいてきた。


「どうするの?」


「とりあえず連れて帰る」


そう言って子猫を抱え車に乗った。



家に着き、ずぶ濡れで泥まみれの子猫をお風呂に入れた。
子猫の体を洗いながら、母に教わった事を色々と思い出していた。



「このアパート、動物と暮らせないんだよ」


そんなことは百も承知だった。
それでもあの時、見て見ぬ振りをしてその場を離れることができなかった。

どうにかお風呂に入れ、きれいになった子猫の体が乾いてきた頃、
私はこれからの事を考えていた。




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