Categoryどうぶつとの出会い

第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。  第6章 出逢い。


デパートの紙袋中には、しましまの小さな子猫がいた。
知り合いの猫が子供を産んだらしく、手分けしてもらい手を探していたそうだ。
ふやかしたごはんを食べられるようになったところで、私のところにやってきたのだ。


「どうする?」


友達が言った。
答えはひとつしかなかった。



小さい頃、近所に猫がいる八百屋さんがあり、よく遊びに行っていた。
とはいえ、今まで猫と暮らした経験がなかった私に不安がないわけではなかった。
それでも私の不安よりも、ずっとずっとこの子の方が不安に違いない、そう思った。
ただ、今回ばかりは父にも母にも相談なしで決めてしまった事を、少しだけ心配した。

その夜、父と母に子猫の経緯を話した。
ずいぶん昔、父と母が三毛猫と暮らしていた事を、この時初めて聞かされた。


「よく来たね」


父と母は目を細めて子猫に言った。



こうして私は初めて猫と暮らすことになった。


ひとりぼっちで見知らぬ場所に連れて来られたその子猫は、
私はライオンの子だと言わんばかりに体を大きく見せた。
隙間を見つけると、どこにでも隠れた。
今まで一緒に暮らした動物たちとは、いつもすぐに仲良くなれたのに
今度ばかりはなぜ仲良くなれないのか、私には全くわからなかった。


それを教えてくれたのは母だった。
母はお菓子の空き缶を用意すると、庭の砂場から砂を持ってきて入れた。
すると子猫はすぐに空き缶の中に入った。
ずっと我慢していたものがなくなった子猫は、少し緊張が解けて見えた。
そして子猫は母に抱かれて寝息をたてた。


翌日ホームセンターへ行き、子猫に必要なものを揃えた。
私は子猫に ” 裕次郎 ” という名前をつけたが、
後に女の子だとわかり、母によって ” ちょんちゃん ” と改名されることになるのだった。

ちょんちゃん3




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第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。  第5章 優しさ。


それから数年後。
私は社会人になっていた。



自宅で犬が出産したと言って、上司が6匹の子犬を連れてきた。
欲しい人に連れて帰ってもらおうということだった。

当時は今のようにペットショップで動物を売っている事は珍しく
犬と暮らしたいと思った時は ” 子犬が産まれた時には是非 ” と
誰かにお願いする、そんな時代だった。


職場はガソリンスタンドだったので、毎日たくさんの人が訪れた。
店内にダンボールを置き、いい出会いがありますようにと心を込めて
外から見えるようにメッセージを書いて貼った。

6匹のうち4匹はその日のうちに新しい家族がみつかった。
残った2匹に仮の名前をつけて面倒をみた。
” 小鉄 ” と名付けた子犬は、それから数日後に新しい家族がみつかった。


最後に残った子犬は他の5匹より体が小さく、少し弱々しく見えた。
兄弟がいなくなった大きなダンボールの隅っこで
小さく丸まっているその子犬が、とても寂しそうに見えた。

数日たってもまだ新しい家族は現れなかった。
持ち上げるとキャンと小さな声で鳴くその子犬を抱くと
とても温かく、とても軽かった。


父と話す事がもうすっかり少なくなっていた私は
その晩、父に子犬の話をした。


「うちに連れてきなさい」


父は笑顔でそう言った。
” 次のお休み ” の約束をした時と同じ気持ちになった。


小さく丸くなっているその子犬に ” ちび丸 ” と名付けた。
そして ” ちび丸 ” との生活が始まった。

ちびまる

” ちび丸 ” を連れて帰り、すぐに動物病院へ行った。
診断は ” くる病 ” だった。

兄弟が多く、ミルクをしっかりと飲めなかった事が原因だろうとの話だった。
体が小さかったのも、抱くとキャンと痛がったのも、すべてそういう事だったと学んだ。


獣医さんには定期的に診てもらった。
しばらくたっても触るとキャンと鳴く様子は変わらなかった。
腕の骨は湾曲したが、それでも一生懸命体を左右にゆすりながら歩く姿は
とても可愛く、とても愛おしかった。


” ちび丸 ” が家族になって、しばらくたったある日。
友達が紙袋を持ってやってきた。

紙袋をのぞくと、小さな子猫がこちらを見ていた。



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第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。  第4章 運命。


” のら ” を連れて帰ると、母がごはんと少しだけ温かいミルクを用意して待っていてくれた。

まだ小さかった私にも、父と母の優しい気持ちが伝わってきた。
心がふわっと温かくなった。


父は ” のら ” に新しいおうちを作ってくれた。
ずっと寂しい思いをしていただろうからと、
” のら ” のおうちは” ロッキー ” がいつも見えるよう向かい合わせに置かれた。

それから私は ” ロッキー ” と ” のら ” といつも一緒だった。

春にはお花見をした。
夏には水遊びをした。
秋には落ち葉で遊んだ。
冬には雪遊びをした。

お世話をいっぱいいっぱい頑張った。


” のら ” が家族になった後、少しづつ小さな家族が増えていった。
ひとりぼっちだった ” のら ” にたくさんの家族ができた。

あひる



ある時 ” ロッキー ” が余命数ヶ月を宣告された。
フィラリアだった。
当時の技術では、手術して治る可能性はゼロに等しいと説明を受けたが
それでも少しでも今後の医療のためになるのならと、心臓の外科手術を受け
奇跡的に回復、数年を懸命に生きた。
いつも一緒だった ” ロッキー ” が天命を全うした後、
” のら ” も後を追うようにして空へと旅立って行った。



” いつもの海 ”で ” のら ” に初めて出逢った翌日の晩。
父と ” 次のお休み ” の約束をした。
実はその時、父と母はもう ” のら ” には会えないと思っていたそうだ。
それでも ” どうにもならない私の思い ” を少しでも和らげようと
諦めをつけさせるために ” 次のお休み ” の約束をしてくれたらしい。



私がそれを知ったのは 、” いつもの海 ”で ” のら ” と ” 奇跡の再会 ” を果たして
だいぶたってからの事だった。




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第1章 記憶にない。  第2章 コロ。  第3章 お世話。

家に帰ると私はすぐ母にその犬の話をした。
母は黙ったまま、私の頭をそっと撫でてくれた。


テレビや電話がどこの家庭にも当たり前のようにあるわけではない当時、
お菓子ひとつとっても ” 我慢することが当たり前 ” で、
たとえそれが辛く悲しいことであっても同じだった。


まだ子供の自分が何もできないもどかしさは
コロがいなくなってしまった時と同じ気持ちだった。



次の日の夜。
ごはんを食べている時に、父が言った。


「次のお休みに、またあの海に行ってみようか。」


そしてこう続けた。


「その時、もしもまたあのわんちゃんに会えたら、一緒に帰ってこよう」



私はその言葉と父の優しさに胸がいっぱいになった。
と同時に、まだ子供だとはいえ ” よく行くいつもの海 ” に ” 突然現れた犬 ” が
次の休みまで同じ場所にいてくれるとは考えられなった。

その日からの数日間は、とてもとてもとても長く感じられた。
日が経つにつれ、いて欲しいけれどきっと会えないだろうという思いが
どんどんと大きくなっていった。



そして指折り数えた ” 次のお休み ” が来た。
朝早くいつもの海に着いた私は、夢中で砂浜へと走った。



「のら!!」



” 幸せの青い鳥 ” が奇跡をもたらしてくれた瞬間だった。
父が微笑んだ。
私はその白い犬を小さな体でしっかりと抱きしめた。

のら
” いつもの海 ” で運命的に出逢った ” のら ”






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第1章 記憶にない。  第2章 コロ。


どこの家でもありがちな事だと思うが、
「ちゃんとお世話するから」とお願いして一緒に暮らすことになったとしても
生き物のお世話は、大抵父か母の仕事になる。
コロも例外ではなかった。


コロは普段、小屋につながれていたが、
父が休みの日は、少し離れた高校のグランドまで行き ” つな ” を離して遊ばせていた。


2~3年たった頃。
いつものようにグランドでコロを遊ばせていた父が、そろそろ帰ろうとコロを呼んだ。
しかしコロは戻ってくることはなかった。


多分連れて行かれてしまったのだろうと父は言った。
当時は当たり前のように野良犬がいたし、放し飼いをしている家庭も多かった。
コロはとても賢い犬だったので、
戻らなかったのではなく、戻ってこれなくなったに違いない。
良い犬はよくいなくなる時代だったし、そう考えるのが妥当だった。


私はとても悲しかった。
自分がちゃんとお散歩に行けば、コロはいなくならなかったかもしれないと悔やんだ。


それから数ヶ月。
近所で子犬が産まれた。
白い子犬は隣の家で、茶色い子犬は我が家で暮らすことになった。


” 今度はちゃんとお世話しよう ” そう心に決めた。

ロッキー
近所で生まれたロッキー 


ある日のこと。
父と兄に連れられて釣りに行くと、砂浜に一匹の犬がいた。
よく行くその海で、犬に会ったことは今まで一度もなかった。
首輪はしていなかったがとてもよく慣れていたので、もしかしたら捨てられたのかもしれない。
兄と私は、うす汚れたその犬といっぱい遊んだ。


あたりも暗くなり、もう帰らなけれなならない時間になった。


「さよならしなさい」


そう父に言われた。
後ろ髪を引かれ、しぶしぶ「バイバイ」とお別れを言いタクシーに乗り込んだ。

タクシーが走り出すと、その犬は歩道をトコトコとついてきた。
タクシーがスピードをあげると、犬は道路に飛び出必死に走ってついてきた。


「パパ!ついてくる!ねぇ、ついてくるよ!!」


泣きながらそう言った。
何度も危ない目にあいながら懸命に走る犬とタクシーとの距離はどんどん広がり、
やがて犬は走ることを諦めた。





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